又市
又市(またいち)†
札撒き御行に身をやつし、全国を叉に掛けて仕掛けを施し事件をまとめる男。小股潜りの又市の二つ名で、各地に仲間や知人を持つ。山猫廻しのおぎんや事触れの治平と組むことが多い。
舌先三寸口八丁、口から先に生まれてきたような小悪党。欺す賺す騙る謀るはお手のもの。縁切り仲人口は得手中の得手。人を魅き付けるような雰囲気を持っているが、それでいて何を考えているのか解らぬところもある。
堅気の山岡百介を仕掛けに協力させたりもするが、一方で裏社会に山岡百介を深入りさせぬよう心を砕いている面もある。
決め台詞は「御行奉為(したてまつる)」。
麹町 四谷門の外、念仏長屋が根城と語るが、実際は不明。
経歴†
武州櫻木村生まれ三多摩育ちの百姓の子。
父は田は枯らす悪さはするの酒乱、稀代のろくでなし。櫻木村の鼻つまみ。村八分にされていたため先代毅左衛門とおさい殺しに加われず、村から義絶される。夜逃げして三多摩辺りで又市が8歳のときに死亡。
母お槇は2つのときに男と逃げる。
江戸を出て、喰うや喰わずで西まで流れ、大津で公家のご落胤を称する林蔵と出会った。靄船の林蔵と義兄弟の杯を酌み交わし、無動寺の玉泉坊と組んで上方を荒らしていた。
摂津の代官所の件の16年前、辰造一家に追われた林蔵とお妙を助けたが、これにより辰造に追われる身となり、お栄の手引きで上方から逃げ出した。
上方を離れた後、江戸で双六売りとなり、さらにゑんま屋の損料仕事を請け負うようになる。黒絵馬の一件により「祇右衛門」に干渉、「祇右衛門」の反撃に抗するため小右衛門と組んで祇右衛門(2人目)(正体は宗右衛門)の捕縛に関わる。その後、宗右衛門が身に付けていた御行装束と道具を受け継ぎ、以後は御行姿を常とする。
民谷伊右衛門と民谷岩の縁談を斡旋したが、後手に回って多くの人死にを出し、さらに民谷伊右衛門と民谷岩を死なせてしまう。
柴田十太夫の依頼で菊の一件で寿美屋与介と話を付ける仕事もしている。
奥州の春殺しの下手人探しの際、初めて治平と組む。その後、山岡百介と出会う。
船幽霊の件で土佐を訪れた際には、助四郎に一文字屋仁蔵を紹介。
摂津の代官所の件の後、大坂でお栄の策謀を暴くため林蔵に協力。
その後八咫烏として活動。出羽経由で遠野に入ると、災いの元になる金塊をこの世から葬るため、小右衛門仕込みの火薬技で宝螺抜けを起こす。
水野忠邦を孤立させ、大奥にも手を回して水野憎しの声で満ちさせ、将軍も無視できないようにする。
石原汀を失脚させるため遠野に残る。
外見†
純白の衣。胸に偈箱を下げて、坊主頭を白木綿で行者包みにしている。
家族・親族†
母:お槇
別名・仇名・通称†
小股潜りの又市、双六売りの又市(二つ名)、又(治平)、又やん(文作)、八咫烏
登場作†
嗤う伊右衛門
巷説百物語
続巷説百物語
後巷説百物語
前巷説百物語
西巷説百物語 鍛冶が嬶・野狐
覘き小平次
数えずの井戸
遠巷説百物語 出世螺
了巷説百物語
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